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有償の音楽教室で著作権の切れていない楽曲を演奏するのは上演権及び演奏権の侵害になるか

カテゴリ:法律

概要

演奏権(22条)侵害は以下の条件で成立する。

 1. 公衆に

 2. 直接見せ又は聞かせることを目的として

 3. 上演し、又は演奏する

著作権の制限事由として

 4. 営利

 5. 学校その他の教育機関ではない

有償の音楽教室で著作権の切れていない楽曲を演奏するのは上記の1、4、5に該当すると考えられる。

争点となっているのは 2. 直接見せ又は聞かせることを目的として3. 上演し、又は演奏するで、音楽教育を守る会は「音楽教室におけるレッスンにおいて先生が生徒に教える目的で楽器を弾いて示すのは、音楽を音楽として享受させるのではなく、教授目的」としてる。橋本 阿友子弁護士は「音楽教室での教師の演奏は、楽曲の一部分を断片的に演奏することがほとんどではないかと思われます。そのような演奏が果たして「聞かせる」目的にあたるといっていいのかについては、慎重に判断されなければならないと思います」と言っている。

ただ判例がないのでこれらの主張が認められるかどうかは不明。

「直接見せ又は聞かせることを目的として」という条文は過失による侵害、たとえばスマホの着信音が鳴る、イヤホンの音漏れ等、を防ぐためにあると考えられる。音楽教室での教師の演奏は業務上その必要性が予見できる(つまり過失とは言えない)ので「教授目的」は抗弁としては主張自体失当である、と私は考えている。

3. 上演し、又は演奏するについては、4小節なり8小節なりという単位で演奏する場合なら、元の音楽著作物の表現上の本質的特徴部分を直接感得できるものでないので演奏に当たらないと、私は考える。

上映権及び演奏権

上演権及び演奏権(22条)侵害の要件は以下の3つ。

  1. 公衆に
  2. 直接見せ又は聞かせることを目的として
  3. 上演し、又は演奏する

1. 公衆

島並良・上野達弘・横山久芳著『著作権法入門』(有斐閣,2009年)では以下のように解説されている。「「公衆」の意味について著作権法が規定するのは,「特定かつ多数の者」を含む(2条5項)ということだけである。特定多数者を付加する前の本来の公衆概念については定義されていないが,もしそれが不特定多数者であれば,2条5項によって拡張された結論としての公衆は単なる多数者と違いがなくなる。わざわざ公衆という概念を用いている以上,公衆とは不特定多数者全般(原則)に特定多数者(2条5項)を付加したもの,すなわち「特定少数者以外すべて」を指すものと解される」。

つまり不特定または多数者のどちらかもしくは両方を満たせば著作権法上においては公衆になる。特定少数者のみが公衆にはあたらない。

特定者と不特定者

不特定者について同書は以下のように解説している。「カラオケボックス店は,それぞれのボックス内でサービスを提供された顧客を事後的に特定できたとしても,事前の段階では誰でも顧客になれるので,店と顧客の人的結合関係は希薄であり,顧客は不特定者に該当する[…略…]レンタルCD/DVDショップのように,会員制で顧客が限定されていても,誰でも会員になれるとするならば同様である」。

特定者と不特定者とについては社交ダンス教室事件の判例を参照(名古屋地裁 平成15年2月7日判決名古屋高裁 平成16年3月4日判決)。

公の要件について

中山信弘著『著作権法』(有斐閣,2007年)pp.218 では22条の公衆要件について以下のように解説している。「公にという要件については,公に上演・演奏する目的があればよく,結果的に聴衆がいない場合でもよい」。

2. 直接見せ又は聞かせることを目的として

音楽教育を守る会は「音楽教室におけるレッスンにおいて先生が生徒に教える目的で楽器を弾いて示すのは、音楽を音楽として享受させるのではなく、教授目的」としてる。

橋本 阿友子弁護士は「音楽教室での教師の演奏は、楽曲の一部分を断片的に演奏することがほとんどではないかと思われます。そのような演奏が果たして「聞かせる」目的にあたるといっていいのかについては、慎重に判断されなければならないと思います」と言っている。

判例がないのでこれらの主張が認められるかどうかは不明。

「直接見せ又は聞かせることを目的として」という条文は過失による侵害、たとえばスマホの着信音が鳴る、イヤホンの音漏れ等、を防ぐためにあると考えられる。音楽教室での教師の演奏は業務上その必要性が予見できる(つまり過失とは言えない)ので「教授目的」は抗弁としては主張自体失当である、と私は考えている。

3. 上演し、又は演奏する

上演・演奏を録音録画したメディア等の再生も上演または演奏に含まれる(2条17項)。

小倉秀夫弁護士は「元の音楽著作物の表現上の本質的特徴部分を直接感得できるものでないと、著作物の「利用」たり得ないからです。4小節なり8小節なりという単位で演奏したときに、そこだけで「元の音楽著作物の表現上の本質的特徴部分を直接感得できる」かと言われると、そうでない楽曲も多そうです」と言っている。

権利制限

非営利かつ聴衆・観衆から料金を受けず、かつ出演者に対し無報酬の場合は、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述できる(38条1項)。料金は名義を問わず、入場料・会場費・会費・ドリンク代等であっても本条の適用を受けない。また宣伝用の無料コンサート等の場合も本条の適用外になる(中山信弘著『著作権法』(有斐閣,2007年)pp.276)。

学校は非営利なので38条を適用することで学校その他の教育機関での上演・演奏が正当化されている。

学校その他の教育機関とは

学校は学校教育法一条で定められており、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とされている。

日本書籍出版協会の出版物に関する35条ガイドラインによると、学校その他の教育機関は、「幼稚園、小中高校、中等教育学校、大学、短期大学、大学院、高等専門学校、特別支援学校、専修学校、省庁大学校または社会教育においては、上記教育機関と同様の年間教育計画を有し、卒業資格を授与するところ」とされている。

また以下のようなものは学校その他の教育機関でないとされる。

  1. 予備校、塾、カルチャースクール、学童保育、企業・団体等の社員・職員研修等
  2. 学校開放などで教育機関以外の者が単に場所として学校を利用する場合
  3. 外部団体が公民館等を単に会場として利用するにすぎない場合

外部リンク

音楽教育を守る会の考え方

ヤマハがJASRACを提訴 - 音楽教室での演奏は聞かせる目的?教育目的?

中山信弘東京大学名誉教授の意見書

中山信弘氏はカラオケ法理を杓子定規に適用するのではなく、奏者と聴衆とをケースバイケースで検討し、演奏権侵害を判断すべき、としている。具体的には、個人レッスンの音楽教室は特定少数を対象にしているので公衆に当たらない可能性を指摘している。

JASRAC vs 音楽教室:法廷で争った場合の論点を考える

対JASRAC訴訟、ヤマハに勝ち目はあるか

音楽教室とJASRAC


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