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クリエイター関係の法律に関するよくある誤解

カテゴリ:法律

「請負契約は口頭でも成立する」は証拠が不要という意味ではない

請負は諾成契約であり契約書の作成は不要である(民法第632条)。請負契約は口頭でも成立するが、裁判でそれを主張するには口頭で契約した証拠(録音・第三者の証言・メールのやりとり等)が必要になる。契約の立証責任は「契約が存在する」と主張する側にあるため、契約書を作るのが確実だ。

著作権は譲渡できる

譲渡できないのは著作者人格権だ(59条)。著作権の譲渡は61条に定められている。

「著作権侵害は親告罪なので起訴されてないならば合法」は間違い

一部の著作権侵害は親告罪である(123条)。親告罪は告訴がなければ公訴を提起することができない、つまり検察が起訴するためには著作権者の申告が必要という意味しかない。なので起訴されていなくても、著作権侵害の構成要件を満たしているなら犯罪である。

引用の際の出所の明示義務違反や、業としてコピープロテクトを解除する等の行為は非親告罪だ

「ゾーニングされているSNSだから公衆にはあたらない」は間違い

島並良・上野達弘・横山久芳著『著作権法入門』(有斐閣,2009年)では以下のように解説されている。「「公衆」の意味について著作権法が規定するのは,「特定かつ多数の者」を含む(2条5項)ということだけである。特定多数者を付加する前の本来の公衆概念については定義されていないが,もしそれが不特定多数者であれば,2条5項によって拡張された結論としての公衆は単なる多数者と違いがなくなる。わざわざ公衆という概念を用いている以上,公衆とは不特定多数者全般(原則)に特定多数者(2条5項)を付加したもの,すなわち「特定少数者以外すべて」を指すものと解される」。

つまり不特定または多数者のどちらかもしくは両方を満たせば著作権法上においては公衆になる。特定少数者のみが公衆にはあたらない。

特定者と不特定者

不特定者について同書は以下のように解説している。「カラオケボックス店は,それぞれのボックス内でサービスを提供された顧客を事後的に特定できたとしても,事前の段階では誰でも顧客になれるので,店と顧客の人的結合関係は希薄であり,顧客は不特定者に該当する[…略…]レンタルCD/DVDショップのように,会員制で顧客が限定されていても,誰でも会員になれるとするならば同様である」。

特定者と不特定者とについては社交ダンス教室事件の判例を参照(名古屋地裁 平成15年2月7日判決名古屋高裁 平成16年3月4日判決)。

写真のトレースが著作権侵害になる可能性はある

他人が撮った八坂神社の祇園祭の写真をもとに、同じ情景の水彩画を制作した行為に著作権侵害が認められ、判決は水彩画の製作者に30万円の支払いを命じている(東京地裁 平成20年3月13日判決)。ほかにも江戸風俗画模写事件II(東京地裁 平成18年5月11日判決)や版画芸術写真事件東京地裁 平成10年11月30日判決)がある。

「無許諾で二次的著作物を作成したが、私的利用が目的のため著作権侵害にはならない」は間違い

元の著作物の本質的特徴が感得される場合には、条文上は、同一性保持権の侵害は私的利用であっても成立する(50条)。

同一性保持権は意に反する改変が要件として要求されている。中山信弘著『著作権法』(有斐閣,2007年)では、イルカ写真事件(東京地裁 平成11年3月26日判決)の判例を以下のように解説している。「意に反する改変とは,著作者の意に反して著作物の表現を変更することを意味するものと解されるから,写真の上下または左右を一部切除して雑誌に掲載したことは,その切除箇所が極めてわずかであるなど著作者の人格的利益を害することがないと認められる場合を除き,原則として同一性保持権の侵害に当たる,と述べている」。

「他人のイラストを参考にしてイラストを作成したが、ポーズや構図を変えているから著作権侵害にはあたらない」は間違い

元のイラストの本質的特徴が感得されるような場合には翻案権および同一性保持権の侵害になる。

「無許諾で二次的著作物を作成したが、特定少数にだけ公開しているので著作権侵害にはあたらない」は間違い

元の著作物の本質的特徴が感得される場合は、無許諾で二次的著作物を作成する行為自体が翻案権および同一性保持権の侵害になる。

日本ではパロディは著作権侵害になる可能性が高い

日本の著作権法にはアメリカの著作権法にあるようなフェアユースがない。なので日本で公表されるパロディ作品は翻案権および同一性保持権の侵害になる。

「非営利なら無許諾で二次創作を公開・頒布しても合法」は間違い

元の著作物の本質的特徴が感得される場合は、無許諾で二次的著作物を作成する行為自体が翻案権および同一性保持権の侵害になる。

インターネットを通じて他人の著作物を送信する場合は、非営利・無料または家庭用受信装置を使った場合でも公衆送信権・公衆伝達権(23条)の侵害になる。

「非営利なら無版権二次創作を公開・頒布しても合法」という主張は、おそらく38条の営利を目的としない上演等の誤解から発生している。

無版権二次創作同人誌の無断転載事件

令和2年(ネ)第10018号 損害賠償請求控訴事件(原審 東京地方裁判所平成30年(ワ)第39343号)(pdf)

この判決では無版権二次創作同人誌の著作権侵害を否定している。

 一審被告らは,本件各漫画には原著作物のキャラクターが複製されている旨主張する。
 しかしながら,漫画の「キャラクター」は,一般的には,漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって,具体的表現そのものではなく,それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから,著作物に当たらない(最高裁判所平成4年(オ)第1443号,同9年7月17日第一小法廷判決,民集51巻6号2714頁)。したがって,本件各漫画のキャラクターが原著作物のそれと同一あるいは類似であるからといって,これによって著作権侵害の問題が生じるものではない。
[…中略…]
そして,原著作物の特定のシーンと本件各漫画のシーンとを対比させた乙10の1~7(もっとも,「アニメ版」として掲げられているシーンについて,第何回のどの部分という具体的特定までがされているわけではない。)の内容を検討してみても,原著作物のシーンと本件各漫画のシーンとでは,主人公等の容姿や服装などといった基本的設定に関わる部分以外に共通ないし類似する部分はほとんど見られず(なお,乙10の1~7の中で,共通点として説明されているものの中には,表現の類似ではなく,アイディアの類似を述べているのに過ぎないものが少なくないことを付言しておく。),また,基本的設定に関わる部分については,それが,基本的設定を定めた回のシーンであるのかどうかは明らかではなく,結局,著作権侵害の主張立証としては不十分であるといわざるを得ない。
 以上の次第で,一審被告らの著作権侵害の主張は,それ自体失当であるし,現在の証拠関係を前提とする限り,仮に原著作物のシーンが特定されたとしても,著作権侵害が問題となり得るのは,主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分(複製権侵害)に限られるものといわざるを得ない(なお,一審被告らは,本件各漫画で描かれた各シーン(ストーリー展開に関わる部分)は,原著作物の基本的設定に関わる部分の翻案に当たり,また,同一性保持権を侵害していると主張するかもしれないが,上記基本的設定に関わる部分は,主人公等の容姿や服装などの表現そのものにその本質的特徴があるというべきであって,ストーリー展開に本質的特徴があるということはできないから,本件各漫画に描かれたストーリー展開が,上記基本的設定に関わる部分の翻案に当たると解する余地はないし,主人公等の容姿や服装など基本的設定に関わる部分に変更がない以上,同一性保持権侵害が問題になる余地もない。)。

また本件の無版権二次創作同人誌は本番行為のある 18 禁 BL 漫画も含まれる。判決文でも件の漫画がわいせつ文書であることは認定されている。しかしわいせつ文書であっても著作権侵害や損害賠償を求めることが、権利の濫用や公序良俗違反にならないとしている。

 一審被告らは,本件各漫画はわいせつ文書に当たるから,そのような文書に基づいて権利行使をすることは許されないと主張するところ,たしかに本件各漫画(本件漫画11を除く。)は特徴⑤⑥を有するものであることが認められる。しかしながら,本件各漫画全体を検討してみても,それらが甚だしいわいせつ文書であって,これに基づく著作権侵害を主張し,損害賠償を求めることが権利の濫用に当たるとか,そのような損害賠償請求を認めることが公序良俗に違反するとまで認めることはできない。

損害額は「同人誌一冊の純利益×PV×0.1」。PV の一割なのは以下の理由から。

  1. 公衆送信行為による著作権侵害の事案において,法114条1項本文に基づく損害額の推定は,「受信複製物」の数量に,単位数量当たりの利益の額を乗じて行うものとされている。受信複製物はローカルに保存されたものしかカウントしないので、損害額は PV より少なくなる
  2. 無料だから閲覧する人が存在するから

外部リンク

同人誌違法アップロードサイト訴訟 控訴審判決(R2.10.6.知財高裁判決)を読む

知財高裁でBL同人作品の無断コピーは著作権侵害という当たり前の判決

この判決で明らかになったのは、キャラの名前と設定の一部だけを流用したタイプの二次創作は著作権法上問題なさそうであるということであり、二次創作が法的にまったく問題ないということではありませんので念のため追記しておきます。元ネタ作品の著作権者が二次創作の作者を訴えて、商品化権や不整競争防止法等、著作権以外の論点が争われた時にどうなるかはわかりません。また、絵やセリフ回し等の表現が類似・同一のタイプの二次創作については、元ネタ作品の著作権者が訴えてくれば著作権侵害とされる可能性大です(現状問題がないのは元ネタ作品の著作権者が大目に見てくれているからに過ぎません)。

外部リンク

「RTによる画像トリミングで著作人格権侵害」 知財高裁判決の意味と影響 弁護士が解説

最新のベストセラー小説のあらすじを書いて、ホームページに掲載することは、著作権者に断りなく行えますか。

脱ゴーマニズム宣言事件

判決では、引用の要件を満たす限りは、引用が必要最小限であることまでは要求されないとするとともに、批評の対象を正確に示すためには、文だけでなく、絵も引用する必要があることを認めた。

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