クリエイターが知っておくべき下請法

カテゴリ:法律

下請法は買いたたきの禁止や発注内容の書面による交付の義務,支払期限の厳守などのルールを定めている.

下請法が適用される基準

資本金と取引内容と両方の基準を満たすとき下請法が適用される. より詳細な情報は 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf) を参照.

資本金

プログラムを除く情報成果作成物(イラスト,作曲,動画,ロゴ,説明書等の作成)の場合

元受けと下請けとの資本金関係が以下のようなときに下請法が適用される(ただし取引内容によってはされない).

  • 資本金が5千万1円以上の元受けがそれ以下の会社や個人に外注する
  • 資本金が1千万1円以上5千万円以下の元受けが1千万円以下の資本金の会社や個人に外注する

下請法が適用される取引(情報成果物作成委託)

下請法が適用される取引(資本金の関係によってはされない)はいくつかあり, クリエイターに関係するものは情報成果物作成委託である.

情報成果物とは

  • プログラム(例:TVゲームソフト,会計ソフトなど)
  • 映画,放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの(例:アニメなど)
  • 文字,図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの(例:設計図,ポスターのデザインなど)

情報成果物作成委託のタイプ

元受けの種類によって分けられる. 元受けが情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託し, 以下のどれかに当てはまる場合下請法が適用される.

元受けが情報成果物を業として提供している事業者である場合

例:ソフトウェア・メーカーが,ゲームソフトや汎用アプリケーションソフトの開発をソフトウェア・メーカーに委託する場合など.

情報成果物の作成を業として請け負っている事業者である場合

例:広告会社が,クライアントから受注したCMの制作をCM制作会社に委託する場合など.

自社で使用する情報成果物の作成を業として行っている場合

 家電メーカーが,内部のシステム部門で作成する自社用経理ソフトの作成の一部をソフトウェア・メーカーに委託する場合など.

親事業者の禁止行為

買いたたき

以下の条件で下請代金の額を決定した場合に買いたたきと判断される.

  1. 発注した内容と同種又は類似の給付の内容に対して,通常支払われる対価に比べて著しく低い額
  2. 1. を不当に定める

減額

下請法は,下請事業者に責任がないのに, 発注時に定められた金額(発注時に直ちに交付しなければならない書面に記載された額)から一定額を減じて支払うことを全面的に禁止しています。 値引き,協賛金,歩引き等の減額の名目,方法,金額の多少を問わず,また,下請事業者との合意があっても,下請法違反となります。
出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.12

元受けが減額を一方的に行ってきた場合

私法上は下請代金債務の一部不履行として,下請事業者は減額された未払金額の支払いを請求できる(民法415条).

下請代金の支払遅延

物品等を受け取った日(受領日)から60日以内で定めなければならない支払日までに下請代金を支払わないことです。 受け取った物品等の社内検査が済んでいないことは,支払を引き伸ばす理由になりません。
出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.13

受領拒否

下請事業者に責任がないのに,発注した物品等を受け取らないことです。
出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.14

不当返品

下請事業者に責任がないのに,発注した物品等を受け取った後に返品することです。
出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.14

不当な給付内容の変更,やり直し

下請事業者に責任がないのに,費用を負担せずに,発注の取消しや内容変更, やり直しをさせ,下請事業者の利益を不当に害することです。
出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.15

報復措置

これらの禁止行為に該当する行為を親事業者が行った場合に, 下請事業者がその事実を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に, 取引数量を削減したり,取引停止などの扱いをすることです。
出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.15

そのほか物の購入強制・役務の利用強制や割引困難な手形の交付など詳しくは 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf) を参照.

親事業者の書面発注義務

口頭発注による様々なトラブルを未然に防止するため,親事業者は発注に当たって, 発注内容を明確に記載した書面を交付しなければなりません。 記載すべき事項は,次のとおり法令で具体的に定めてあり, 原則として該当するものをすべて決定した上で記載する必要があります。
  1. 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
  2. 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
  3. 下請事業者の給付の内容
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
  5. 下請事業者の給付を受領する場所
  6. 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
  7. 下請代金の額(算定方法による記載も可)
  8. 下請代金の支払期日
  9. 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
  10. 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当 額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
  11. 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
  12. 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日及び決済方法
ただし,下請法では発注書面の様式は定めていないので,取引内容に応じて適切な発注書面を作成すれば問題ありません。 重要なのは,発注したら直ちに下請事業者に発注書面を交付することです。 この規定に違反すれば,50万円以下の罰金に処せられます。
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出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.16, 17

発注書面をメールのような電磁的方法で送付することもできる. ただし書面又は電磁的方法で下請業者から承認を得ている必要がある(下請法3条2項,下請法施行令2条1項). その際に電磁的方法での発注を拒否できることも併せて提示しなければならない.

知的財産権を譲渡させることについて

Q16 下請事業者に知的財産権が発生する情報成果物作成委託において,当該知的財産権を譲渡させることについては後日契約書で明確化したいと考えていますが,よいでしょうか。

 A. 委託した給付の内容に含んで知的財産権を譲渡させる場合には,下請法第3条により交付を義務付けられた発注書面(3条書面)にその旨を記載し,知的財産権の譲渡対価を含んだ下請代金の額を,下請事業者との十分な協議の上で設定して発注する必要があります。  なお,委託した給付の内容に含まず,後日,当該知的財産権については譲渡対価を支払って譲渡させるという場合には,3条書面に知的財産権の譲渡についての記載は要しません。
出典 Q16 下請事業者に知的財産権が発生する情報成果物作成委託において,当該知的財産権を譲渡させることについては後日契約書で明確化したいと考えていますが,よいでしょうか。

下請法に違反する契約は無効になるのか

ならない.ただし公序良俗に違反するときには無効になる (岐阜商工信用組合事件判決・最判昭和52年6月20日民集31・4・449) (花王化粧品販売事件東京高裁判決「東京高判平成9年7月31日判事1624号55項等」).

参考にした記事

公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)

公正取引委員会 よくある質問コーナー(下請法)

菅沼篤志ほか『下請契約トラブル解決法 第2版』(自由国民社,2013年)