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電子書籍の価格について

カテゴリ:会計

そもそも論として電子書籍を安売りして利益が増えるならば、出版社は安売りをする。出版社は市場を独占しているわけではないので勝手に競争して値段が下がる(市場を独占しているのは出版社ではなく Amazon)。そうならないのは電子書籍が儲からないからだ。

電子書籍の原価と限界費用

新規に書籍を電子化する場合の原価とすでに電子化された書籍の限界費用とは区別して考えなければならない。電子書籍の場合、一般的に紙の本より限界費用が低い。なのでより値引きして販売できる可能性がある。しかし後で述べるように、電子書籍を安く販売しても利益がでない。

限界費用

新規に書籍を電子化する場合の原価は読者「電子書籍なのになんで安くないんだ!」→出版社「いや電子の方が原価が高いし……」が大体正しい。

電子化された書籍の限界費用とはその電子書籍をひとつ販売するのにかかるコストだ。言い換えれば赤字にならない限界の販売価格だ。それは上記のリンク先の例でいえば以下の要素からなる。

  • 電子書籍・電子取次の流通マージン
  • 著者への印税

製作費、製作にかかる人件費、書籍の電子化にかかるコストはサンクコストだ。なので限界費用には計上しない。よって上記の例では出版社は 1000 円の書籍を最大で 400 円まで価格を下げて販売できる。

紙の本の限界費用

紙の本の場合はさらに印刷や返本のコストが発生する。そのため書店に値引きの自由があったとしても、紙の本は電子書籍よりも高くなる。

高い本と安売りの錯誤

出版社が技術書のような本を安く売らないのは納得できるだろう。そのような本は需要が少ないうえに価格が高くても売れるからだ。だから技術書のような本は電子書籍化で限界費用が削減できたとしても価格は下がらない。

安売りの錯誤

400 円のコミックを 300 円で販売する場合、25 %値引きされているため販売量が 25%以上増えればいいというのは間違いだ。

400 円のコミックの限界費用が 250 円、つまり 400 円のコミックを一冊売った時の貢献利益が 150 円だったとする。それに対して同じコミックを 300 円で一冊売った時の貢献利益は 50 円だ。150/50 = 3 なので、この例では 400 円のコミックを 300 円で販売するとき、同じ利益を出すのに必要な販売量は3倍になる。

2015年時点での世界の電子書籍のシェアは紙の本の 1/5なので、コミックのようなもともと安い本は電子書籍化しても安く販売できない。日本の場合、2015年の電子書籍のシェアは紙の本に対して 1/10、2018年で 1/5。

まとめ

もともと高い本は安売りしてもたいして需要が増えず、高くても売れるから安くならない。安い本を電子書籍化しても販売数量が増えないため安くできない。ただし電子書籍市場が紙の本の市場と同じくらいの規模になった場合、コミックのように多数売れる書籍は紙の本より安くなる可能性がある。

参考にした記事

読者「電子書籍なのになんで安くないんだ!」→出版社「いや電子の方が原価が高いし……」

読者「Amazonキンドルは安くていいね!」→出版社「いや、それも違うかも……」

2020年度の電子書籍市場は4821億円、28.6%の大幅増加。コミックが4002億円を占める

外部リンク

漫画村はマンガビジネスが上手くいきすぎているからこそ出てきた犯罪者なんだぞ

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