車や銃の知的財産権
メーカーのロゴデザインや商品上の文字等は商標(Trademark)で保護され、デザイン全体とその部位とは意匠(Design patent)で保護される。商標・意匠が登録されているなら、これらの3Dモデルを配布すると権利侵害となる可能性がある。
ただし商標は指定商品・指定役務の制約があり、意匠は物品が同一・類似の制約がある。「指定商品・指定役務」から外れた商標や、「物品が同一・類似」から外れた意匠でも不正競争防止法や著作権法で保護されている可能性がある。
特許・意匠・商標の相違点
クリエイターが知っておくべき下請法
下請法は買いたたきの禁止や発注内容の書面による交付の義務、支払期限の厳守などのルールを定めている。条文は公正取引委員会の下請代金支払遅延等防止法で確認できる。
公正取引委員会の下請法のページは情報が充実している。
フリーランスの場合はフリーランス・事業者間取引適正化等法の対象になる。内容は下請け法とほぼ同じ、通報先も公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省で同じ。
下請法に違反している場合どうするか
まず和解を試みる。それができない場合は裁判になる。あまり期待はできないが通報による行政指導で問題が解決することもある。
下請法や公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省はあなたの代わりに請負代金を回収してくれるわけではない。債権回収は自分でやる必要がある。
下請け法違反の通報先
公正取引委員会の下請け課や取引課、中小企業庁の各地の経済産業局の産業部中小企業課へ通報する。
クリエイター関係の法律に関するよくある誤解
目次
- 「請負契約は口頭でも成立する」は証拠が不要という意味ではない
- 著作権は譲渡できる
- 著作者人格権は制限できる
- 「著作権侵害は親告罪なので起訴されてないならば合法」は間違い
- 「白黒を判定する権利があるのは著作権者」は間違い
- 「著作権法はアイデアを保護しない」は間違い
- 「ゾーニングされているSNSだから公衆にはあたらない」は間違い
- 企業内複製・業務上の複製も複製権侵害になる
- 教育のための複製でも著作権者への補償金が必要
- 写真のトレースが著作権侵害になる可能性はある
- イラストのトレース検証で名誉棄損が認定された判例がある
- 「無許諾で二次的著作物を作成したが、私的利用が目的のため著作権侵害にはならない」は間違い
- 「他人のイラストを参考にしてイラストを作成したが、ポーズや構図を変えているから著作権侵害にはあたらない」は間違い
- 「無許諾で二次的著作物を作成したが、特定少数にだけ公開しているので著作権侵害にはあたらない」は間違い
- 日本ではパロディは著作権侵害になる可能性が高い
- 「非営利なら無許諾で二次創作を公開・頒布しても合法」は間違い
- キャラクターに著作権は発生しない
- AI による画像生成
- 「AI が生成した画像に著作権は発生しない」は間違い
- 「プロンプトには著作権がない」は間違い
- 「生成AIの出力は依拠の立証ができないので合法」は間違い
- 新橋玉木屋事件(煮豆売り事件)
- 生成AIの利用者も著作権侵害になる
- 生成 AI を用いたサービス提供を行う事業者が著作権侵害になるケース
- 無版権二次創作同人誌の無断転載事件
- 不正競争防止法による模倣の判例
- 写真素材に依拠して作成されたが著作権侵害が否定された判例がある
- 外部リンク
「請負契約は口頭でも成立する」は証拠が不要という意味ではない
請負は諾成契約であり契約書の作成は不要である(民法第632条)。請負契約は口頭でも成立するが、裁判でそれを主張するには口頭で契約した証拠(録音・第三者の証言・メールのやりとり等)が必要になる。契約の立証責任は「契約が存在する」と主張する側にあるため、契約書を作るのが確実だ。
著作権は譲渡できる
譲渡できないのは著作者人格権だ(59条)。著作権の譲渡は61条に定められている。
著作者人格権は制限できる
中山信弘著『著作権法』(有斐閣,2007年)p. 364 では以下のように解説している。
著作者人格権には一般的人格権に相当するものも包含されており、著作者人格権の全てを、財産権と同様な意味で放棄可能とする解釈は採りえないであろう。他方実務においては、必要に迫られて、著作者人格権の不行使特約を締結する例も多いが、未だ司法の確定的な判断はなく、疑心暗鬼の中で実務は進んでいる状況と言えよう。今後は、放棄の態様に応じた検討が必要である。
公表権を制限する契約は一般的だ。たとえば、未発表のゲームのテキストの翻訳を下請けに出すとする。下請けが、その翻訳をゲーム発表前に公表すると問題になる。つまりリークを防ぐために、公表権を制限する必要がある。
同一性保持権を制限する契約も多い。イラストの色調を補正したりトリミングしたりして、イラストを使用することがよくあるからだ。
外部リンク
改変への包括的な黙示の同意と同一性保持権―食品包装デザイン事件― 東京地裁判平成29. 11. 30平成28年(ワ)23604号[食品包装デザイン]
「著作権侵害は親告罪なので起訴されてないならば合法」は間違い
イラスト作成業務の委託契約書の解説
イラストレーターのための著作権
著作権
著作者の権利
著作者の権利には譲渡可能な権利(以下著作権)と譲渡不可能な権利(以下著作者人格権)とがある。つまるところデジタルイラストの販売とはその著作権(利用権)の販売である。
著作権と著作権者
著作権を持っている者を著作権者とし、著作物の製作者を著作者とする。著作権を譲渡した場合、著作者 ≠ 著作権者になる。
著作権の譲渡と利用許諾
権利の販売方法には著作権を譲渡する方法と利用許諾による利用権の設定とがある。著作権を譲渡する方法では譲渡された著作権は第三者にその著作権を再譲渡できる。それに対し利用権では著作権者の許諾がなければその利用権を譲渡できない(63条3項)。
基本的に著作権は譲渡すべきではなく、利用許諾による利用権を設定すべきである。著作権を譲渡した場合、著作物が意図しない使われ方をしてもそれに対抗できない。加えて著作権侵害に対抗できるのは著作権者だけなので、著作権侵害に対して何の行動もとれなくなる。
著作権の譲渡も利用許諾も非要式行為なので口頭でも成立する。著作権の譲渡なのか利用許諾なのかは後で揉めやすいので必ず契約書に記載する。
独占的利用許諾と単純利用許諾(非独占的利用許諾)
単純利用許諾は多数の第三者に著作物の利用を認める。インターネットで不特定多数にコンテンツを公開する場合はこちらになる。
独占的利用許諾の場合は、著作権者は利用権者以外の第三者に同一内容の許諾を付与しないことを約束する。著作権を譲渡しない場合はたいてい、この独占的利用許諾を結ぶことになる。
著作権侵害に対抗できるのは著作権者のみである。しかし独占的利用許諾を締結している場合は、著作権を持たない利用権者であっても差止請求や損害賠償請求ができる。
著作権の登録
著作権は登録しなくても発生する。しかし著作権を登録しておくと、第三者に対抗(なりすまし防止)できる。
登録されている著作物は著作権等登録状況検索システムで検索できる。
登録方法などは著作権登録制度を参照。