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クリエイターが知っておくべき下請法

カテゴリ:law

下請法は買いたたきの禁止や発注内容の書面による交付の義務、支払期限の厳守などのルールを定めている。条文は公正取引委員会の下請代金支払遅延等防止法で確認できる。

公正取引委員会の下請法のページは情報が充実している。

下請法に違反している場合どうするか

まず和解を試みる。それができない場合は裁判になる。あまり期待はできないが通報による行政指導で問題が解決することもある。

下請法や公正取引委員会、中小企業庁はあなたの代わりに請負代金を回収してくれるわけではない。債権回収は自分でやる必要がある。

下請け法違反の通報先

公正取引委員会の下請け課や取引課、中小企業庁の各地の経済産業局の産業部中小企業課へ通報する。

下請法が適用される基準

資本金と取引内容と両方の基準を満たすとき下請法が適用される。より詳細な情報は公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)を参照。

資本金

プログラムを除く情報成果作成物(イラスト、作曲、動画、ロゴ、説明書等の作成)の場合

元受けと下請けとの資本金関係が以下のようなときに下請法が適用される(ただし取引内容によってはされない)。

元受けの資本金がちょうど1千万円の場合は、下請法が適用されないことに注意する。

下請法が適用される取引(情報成果物作成委託)

下請法が適用される取引(資本金の関係によってはされない)はいくつかあり、クリエイターに関係するものは情報成果物作成委託である。

情報成果物とは

  • 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの(例:設計図、ポスターのデザインなど)

  • 情報成果物作成委託のタイプ

    元受けの種類によって分けられる。元受けが情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託し、以下のどれかに当てはまる場合下請法が適用される。

    元受けが情報成果物を業として提供している事業者である場合

    例:ソフトウェア・メーカーが、ゲームソフトや汎用アプリケーションソフトの開発をソフトウェア・メーカーに委託する場合など。

    情報成果物の作成を業として請け負っている事業者である場合

    例:広告会社が、クライアントから受注したCMの制作をCM制作会社に委託する場合など。

    自社で使用する情報成果物の作成を業として行っている場合

    例:家電メーカーが、内部のシステム部門で作成する自社用経理ソフトの作成の一部をソフトウェア・メーカーに委託する場合など。

    親事業者の禁止行為

    受領拒否(第4条一号)

    下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,下請事業者の給付の受領を拒むこと。

    下請代金の支払遅延(第2条の2)(第4条二号)

    物品等を受け取った日(受領日)から支払日までに下請代金を支払わないこと。この支払日は60日以内で定めなければならない。受け取った物品等の社内検査が済んでいないことは、支払を引き伸ばす理由にならない。

    減額(第4条三号)

    下請事業者に責任がないのに、発注時に定められた金額(発注時に直ちに交付しなければならない書面に記載された額)から一定額を減じて支払うこと。値引き、協賛金、歩引き等の減額の名目、方法、金額の多少を問わず、また、下請事業者との合意があっても、下請法違反となる。

    元受けが減額を一方的に行ってきた場合

    私法上は下請代金債務の一部不履行として、下請事業者は減額された未払金額の支払いを請求できる(民法415条)。

    不当返品(第4条四号)

    下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,下請事業者の給付を受領した後,下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

    買いたたき(第4条五号)

    下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

    報復措置(第4条七号)

    これらの禁止行為に該当する行為を親事業者が行った場合に、下請事業者がその事実を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、取引数量を削減したり、取引停止などの扱いをすること。

    不当な給付内容の変更、やり直し(第4条2項四号)

    下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせ、下請事業者の利益を不当に害すること。


    そのほか物の購入強制・役務の利用強制や割引困難な手形の交付など詳しくは公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)を参照。

    親事業者の書面発注義務(第3条)

    下請法3条は必須事項の記載しか要求していない。クリエイターならば、著作権を譲渡するのか著作権を譲渡せず利用許諾をあたえるのか、を決めておく必要がある。

    口頭発注による様々なトラブルを未然に防止するため、親事業者は発注に当たって、発注内容を明確に記載した書面を交付しなければなりません。記載すべき事項は、次のとおり法令で具体的に定めてあり、原則として該当するものをすべて決定した上で記載する必要があります。

    1. 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
    2. 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
    3. 下請事業者の給付の内容
    4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
    5. 下請事業者の給付を受領する場所
    6. 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日
    7. 下請代金の額(算定方法による記載も可)
    8. 下請代金の支払期日
    9. 手形を交付する場合は、手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
    10. 一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当
      額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
    11. 電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
    12. 原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法

    ただし、下請法では発注書面の様式は定めていないので、取引内容に応じて適切な発注書面を作成すれば問題ありません。

    重要なのは、発注したら直ちに下請事業者に発注書面を交付することです。

    この規定に違反すれば、50万円以下の罰金に処せられます


    出典 公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)p.p.16, 17

    発注書面をメールのような電磁的方法で送付することもできる。ただし書面又は電磁的方法で下請業者から承認を得ている必要がある(下請法3条2項、下請法施行令2条1項)。その際に電磁的方法での発注を拒否できることも併せて提示しなければならない。

    下請法に違反する契約は無効になるのか

    ならない。ただし公序良俗に違反するときには無効になる(岐阜商工信用組合事件判決・最判昭和52年6月20日民集31・4・449)(花王化粧品販売事件東京高裁判決「東京高判平成9年7月31日判事1624号55項等」)。

    参考にした記事

    公正取引委員会 ポイント解説下請法(pdf)

    公正取引委員会 よくある質問コーナー(下請法)

    フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(pdf)

    下請かけこみ寺活用事例集(pdf)

    菅沼篤志ほか『下請契約トラブル解決法 第2版』(自由国民社、2013年)


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