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イラストレーターのための著作権

カテゴリ:法律

著作者の権利

著作者の権利には譲渡可能な権利(以下著作権)と譲渡不可能な権利(以下著作者人格権)とがある。 つまるところデジタルイラストの販売とはその著作権(利用権)の販売である。

著作権と著作権者

著作権を持っている者を著作権者とし、著作物の製作者を著作者とする。 著作権を譲渡した場合、著作者 ≠ 著作権者になる。

著作権の譲渡と利用許諾

権利の販売方法には著作権を譲渡する方法と利用許諾による利用権の設定とがある。 著作権を譲渡する方法では譲渡された著作権は第三者にその著作権を再譲渡できる。 それに対し利用権では著作権者の許諾がなければその利用権を譲渡できない(63条3項)。

基本的に著作権は譲渡すべきではなく、利用許諾による利用権を設定すべきである。 著作権を譲渡した場合、著作物が意図しない使われ方をしてもそれに対抗できない。 加えて著作権侵害に対抗できるのは著作権者だけなので、 著作権侵害に対して何の行動もとれなくなる。

著作権の譲渡も利用許諾も非要式行為なので口頭でも成立する。 著作権の譲渡なのか利用許諾なのかは後で揉めやすいので必ず契約書に記載する。

独占的利用許諾と単純利用許諾(非独占的利用許諾)

単純利用許諾は多数の第三者に著作物の利用を認める。インターネットで不特定多数にコンテンツを公開する場合はこちらになる。

独占的利用許諾の場合は、著作権者は利用権者以外の第三者に同一内容の許諾を付与しないことを約束する。 著作権を譲渡しない場合はたいてい、この独占的利用許諾を結ぶことになる。

著作権侵害に対抗できるのは著作権者のみである。 しかし独占的利用許諾を締結している場合は、著作権を持たない利用権者であっても差止請求や損害賠償請求ができる。

著作者人格権

著作者人格権は譲渡できない。 それを譲渡する契約書があってもその部分は無効になる。 ただし契約内容によってはその権利は制限される。 著作者人格権は以下の3つがある。

公表権(18条)

公表権は未公表作品の公表時期を決定する権利だ。 ただし著作権を譲渡した場合、譲受人がその著作物の公表時期をきめられる(18条2項1号)。

著作権を譲渡した場合、著作者の公表権は制限されるのが普通だ。 たとえば委託でゲームのイラストを描き、そのイラストを納品したとする。 そのイラストの著作者が公表権を持っている(著作者人格権なので譲渡できない)からといって、 その未公表のイラストを譲受人の許諾なしに SNS 等で公表した場合、問題になる。

氏名表示権(19条)

氏名表示権は著作物への氏名表示の有無と、表示方法とを決定する権利だ。 表示する氏名は実名だけでなくペンネームやハンドルネームも選択できる(19条1項)。

公正な慣行に従う場合は、氏名表示を省略しても氏名表示権の侵害にならない 。 たとえば実店舗のBGMなどでは氏名が表示されない。 なので著作物に氏名表示をさせたいならば、契約書にその旨を書く必要がある。

同一性保持権(20条)

同一性保持権は著作物の改変に反対できる権利だ。 著作物の改変によって品質が向上する場合でも同一性保持権の侵害になる。

イラストの場合、トリミングや明るさの調整等の改変は日常的に行われる。 そのたびに著作者に許可を取るのは現実的ではない。 なので契約書に可能な改変をあらかじめ規定しておく。

イラスト作成業務の委託契約書の解説

イラスト作成業務の委託契約書 は自由に改変して使用でき、再配布できる。

第2条(権利の帰属)

  1. 本著作物の著作権は甲に帰属する。乙から提出された作成指示書、テキスト原稿、画像等については、乙に帰属する。

解説

重要なのは 2条1項で、これは著作権を譲渡しない条項だ。 利用権の設定は第4条行っている。

第4条(利用許諾)

1. 甲は次の各号による乙の行為を許諾する。

 一 インターネット上への公開を目的とする本著作物の使用。

 二 インターネット上の公開またはコンテンツの維持を目的として行う本著作物の翻案。

 三 販促目的での本著作物の印刷物の配布。

 四 本著作物の印刷を目的として行う本著作物の翻案。

解説

他に許可したい行為がある場合ここに追加する。

第7条(独占的利用許諾)

解説

著作権を譲渡する場合(著作権の譲渡は非推奨)は不要。

第8条(氏名表示権)

解説

氏名表示が必要な時はここを書き換える。 氏名の表示方法の条項も必要になる

第9条(納期)

解説

ファイル形式が異なる場合はここを書き換える。アップロード先の URL やファイル名を記載することもある。

第 11 条(受入れ・検査および引渡し)

解説

リテイクの回数や内容を制限するときはここを書き換える。 変更量が大きいときは追加料金と追加納期とを要求した方がいいかもしれない。

第 12 条(代金支払方法)

  1. 乙は、甲に対し、イラスト作成業務及び本著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、金_円(消費税込み)を支払う。
  2. 乙は、_条の支払期日までに代金の全部または一部を支払うことができないときは、支払期日の翌日から支払いをする日までの期間について、未払金に対し、年利_%を乗じた額を遅延利息として支払う。

解説

これは買い取りの場合の条項だ。買い取りの場合は、仕事を始める前に料金の半額を先払いするようにしたり、 料金の全額が支払われないと利用許諾を出さないようにしたりすることも検討するといい。

売上に比例した報酬の場合は以下のような文言になる。

1. 乙は、甲に対し、イラスト作成業務及び本著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、 本件キャラクターを使用して商品化した製品における乙の売上の_%を支払う(以下、本件キャラクターを使用して商品化した製品を「本件各製品」という)。

2. 前項の使用料請求権は、本件各製品が乙の工場または乙が製造を委託する第三者の工場から出荷されたときに発生するものとする。 ダウンロード販売等の電磁的方法で販売される場合は、毎月末日に前項の使用料請求権が発生するものとする。

3. 前項に基づいて発生した使用料について、乙は甲に対して、毎月末日締めで、翌月末日までに甲が指定する銀行預金口座に振り込んで支払う。 振込手数料は乙の負担とする。

4. 乙は毎月末日締めで、当月1カ月間の本件各製品の製造数量、販売数量、販売価格を集計し(製品が複数種類あるときは、それぞれについて)、 これを速いやかに甲に報告する。

第 16 条(契約の解除)

解説

契約解除について何の取り決めもないときは、以下の条件をすべて満たす場合に契約を解除できる。(民法第541条)

  1. 相手方が期限に債務を履行しない
  2. 総統の期間を定めて履行の催告をするが、その期間内に履行がない

契約の解除条項がない場合は、取引先に信用不安が認められる場合や契約の一部を履行しない場合でもすぐに契約を解除できない。 これは漫画制作のような継続的な取引の場合に重要になる。

例えば毎月 16 ページの漫画を書く契約があるとする。 契約の解除条項がない場合は、先月の原稿料入金がなかったとしても今月の原稿を引き渡す必要がある。 契約の解除条項がある場合は、先月の原稿料入金の不履行を根拠として契約を解除できる。

参考文献

島並良・上野達弘・横山久芳『著作権法入門』(有斐閣、2009年)

藤原唯人 『著作権で迷ったときに開く本 Q&A』(カナリア書房、2013年)

池辺吉博 『債権回収の進め方』(日経文庫、2006年)

イラスト作成業務の委託契約書

絵仕事依頼・受託時の契約書文例

漫画家と契約の話

知財教材「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」(特許庁)


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