固有振動数と減衰比の計算
固有値(固有振動数ではない)の求め方
常微分方程式の固有値を無次元化して整理すると固有振動数と減衰比とが出てくる.まずは固有値を計算する.
運動を常微分方程式で表現すると以下のようになる.時間微分をドット・で表現する.
これは2階の線形常微分方程式なので一般解は以下のようになる.
この s1,s2 を固有値(特性値・特性根)と呼ぶ.
例
固有値を求めるには方程式に一般解を代入し s1,s2 を計算する.例えば以下の方程式の固有値を求めてみる.
(est)' = sest,(est)'' = s2estより
(s2 + 2s + 5)est = 0
est≠0 より
s2 + 2s + 5 = 0
解の公式を使って解くと,固有値 s は -1 ± 2i になる.
振動数と減衰特性
固有値の実部の絶対値は減衰特性で,虚部の絶対値は振動数だ.上記の例では振動数は2,減衰特性は1になる.
固有値の実部の符号と虚部の符号とによって系が振動するか発散するかがきまる.まとめると以下のようになる.
虚部 = 0(非振動) | 虚部 ≠ 0(振動) | |
実部 = 0 | 一定値 | 一定振れ幅で振動 |
実部 < 0 | 非振動・減衰 | 振動・減衰 |
実部 > 0 | 非振動・発散 | 振動・発散 |
物理的な機械ではたいてい実部 < 0 で虚部≠0 になる.
無次元化
一般的な運動方程式は m,c,k の3つのパラメータがある.しかしこれを m で割ればパラメータを2つにできる.このように算術的にパラメータの数を減らす操作を無次元化と呼ぶ.
すると固有値は以下のようになる.
固有値の表現の変換
固有値の√の中身で系の振動の有無がきまる.この式を変形して振動と減衰とを把握しやすくする.
C = 2ζωn ,K = ωn2 と置き換えると固有値は以下のように表現できる.ζはゼタ(ジータ)と読む.
このζを減衰比とよび,ωnを固有振動数とよぶ.それぞれ以下の式で計算できる.
一般的にこの ωn を固有振動数と呼んでいるが,これは固有角振動数[rad/s]だ.
この固有角振動数ωn[rad/s]に 1/2π をかけると固有振動数[Hz]に変換できる.
元々の方程式は以下のようになる.
固有振動数 ≠ 実際の振動数
振動数は固有値の虚部なので,無次元化された固有値の振動数は以下のようになる.
√ζ2-1 の部分は減衰だ.減衰があればそれだけ振動数は少なくなる.ζ2-1 > 0 のとき,この系は振動しない.この状態を過減衰とよぶ.