車のダンパー・ショックアブソーバーの粘性減衰係数の設定
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ダンパーの設定をする前にばね乗数をきめなければならない. ばね乗数の計算方法は 自動車のサスペンションの固有振動数の計算方法 を参照.
ダンパーの減衰力はばねの伸縮力を吸収するために導入されている. よってばねの伸縮力に応じてダンパーの減衰力は調整される. 固いばねにはやわらかいダンパーを使い,やわらかいばねには固いダンパーを使う.
これを調整するのに減衰比ζを使うのが便利だ. 減衰比は臨界減衰係数に対するダンパーの粘性減衰係数で定義される.

減衰比の計算式
C:粘性減衰係数[N・s/m]
m:ダンパーにかかる加重[kg]
k:ばね乗数[N/m]
m:ダンパーにかかる加重[kg]
k:ばね乗数[N/m]
好ましい状態はζ = 0.12~0.2 の間*1だ. ζ < 0.12 の場合はばねが固くダンパーがやわらかい. このような設定ではロールの跳ね返りが生じる. ζ > 0.2 の場合はばねが柔らかくダンパーが固い. この場合はハンドル操作に対してロールの遅れる,応答性の悪い設定になる.
*1宇野高明著 グランプリ出版 車両運動性能とシャシーメカニズム p.203
減衰比とは何か
減衰比の分母となっている臨界減衰係数は系(この場合は車)が振動するかしないかの閾値である. もしダンパーの粘性減衰係数がこの値以上ならばこの系は振動しなくなる.
減衰比の導出
詳しい解説は固有振動数と減衰比の計算を参照.
以下のような1自由度系振動モデルを考える.

1自由度系振動モデル
C:粘性減衰係数[N・s/m]
m:サスにかかる加重[kg]
k:ばね乗数[N/m]
m:サスにかかる加重[kg]
k:ばね乗数[N/m]
この運動方程式は以下のようになる.

運動方程式
この方程式を解いたとき の固有角振動数を求める部分は以下のようになる.

解の固有角振動数の部分
C2 < 4mk の時,解に sin を含む項が現れ振動する. それ以外の時は振動しない.この2値の比をとったものが減衰比である.

減衰比