スプリングの硬さ[N/m] は車重に応じて変更することが望ましい.
軽い車体にはやわらかいスプリングを合わせないと狙った効果を得られない.
適切なスプリングの硬さは固有振動数から計算できる.固有振動数[Hz]は以下の式になる.
m:サスペンションにかかる加重[kg]
k:ばね乗数[N/m]
一般的な固有振動数は 1.0Hz~1.5Hz*1 だ.
固有振動数が 1.5Hz より大きいならハード,1.0Hz より小さいならソフトだといえる.
サスペンションにかかる荷重は車の重心位置によって変わる.
たいていの車はホイールベースの中心に重心があるわけではないのでフロントとリアのサスペンションにかかる荷重は異なる.
重心位置からタイヤにかかる荷重を計算する方法は
タイヤにかかる荷重の計算
を参照.
ダンパー・ショックアブソーバーの設定は
車のダンパー・ショックアブソーバーの粘性減衰係数の設定
を参照.
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静止時のタイヤ前後にかかる荷重
平地での荷重
W:車の重量[N]
L:ホイールベース[m]
lf:重心から前輪までの距離[m]
lr:重心から後輪までの距離[m]
Wr まわりのモメントは Wf・L = W・lr.
Wf も同様にすると,平地でのタイヤにかかる荷重はそれぞれ以下の数式になる.
平地での荷重の数式
左右のタイヤの重心間の距離が等しいならば,左右のタイヤにかかる荷重は W/2 である.
静止時かつロール方向へ傾きがある場合の左右のタイヤにかかる荷重
ロール方向への傾きがあるときの荷重
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ダンパーの設定をする前にばね乗数をきめなければならない.
ばね乗数の計算方法は
自動車のサスペンションの固有振動数の計算方法
を参照.
ダンパーの減衰力はばねの伸縮力を吸収するために導入されている.
よってばねの伸縮力に応じてダンパーの減衰力は調整される.
固いばねにはやわらかいダンパーを使い,やわらかいばねには固いダンパーを使う.
これを調整するのに減衰比ζを使うのが便利だ.
減衰比は臨界減衰係数に対するダンパーの粘性減衰係数で定義される.
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タイヤのトラクション,ブレーキ,転がり抵抗,空気抵抗,遠心力を使用したシミュレーターを考える.
簡単のために自動車は平面上を移動するものとし,段差を考慮しない.
概要
車体にかかる力をすべて計算して,数値計算により速度ベクトルと位置ベクトルとを計算する.
車体にかかる以下の力を計算により求める.太字表記はベクトルを表す.
トラクション Ftraction[N]
空気抵抗 Faero[N]
転がり抵抗 Frr[N]
遠心力 Fc[N]
ブレーキ Fbrake[N]
コーナリングフォース Fcf[N]
これらを足し合わせれば車体にかかっている力が求まる.上下の移動を考慮しないので,重力は計算に入っていない.
Faero と Frr と Fbrake とは Ftraction
と逆向きであることに注意.
F = Ftraction + Faero + Frr
+ Fc + Fbrake + Fcf
力がわかれば,加速度ベクトルは運動の第2法則で計算できる.
a = F/m
a:車の加速度 [m/s2]
m:車の質量 [kg]
車の速度ベクトル v[m/s] は加速度ベクトルを時間に関して積分することで求められる.シミュレーターで積分を計算するには,オイラー法やホイン(Heun)法,ルンゲ=クッタ法を使う.オイラー法を使う場合は以下のようになる.
v = v + dt・a
dt:前フレームからの経過時間[s]
車の位置 pも同様に計算できる.
p = p + dt・v
加速度の省略
加速度から一度に位置を計算するには以下のようになる.
p = p + v・dt + 0.5・a・dt2
フレームレートが高い場合は加速度の項は非常に小さな値になるため,加速度の項を省くことがある.
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